医療法人蒼優会理事長・NLC野中腰痛クリニック院長:野中康行

ILC国際腰痛クリニック元院長 野中康行から患者様へ重要なお知らせ

はじめに

私、野中康行は、2018年6月に大阪でILC国際クリニックを開設してから、2021年7月21日に運営方針の違いから廃院とするまで、理事長及び院長として全責任を持って診療を行っておりました。

また上記の期間(2018年6月から2021年7月21日)は、腰痛患者様に対してDST法、PLDD法、PIDD法、PODD法、ハイブリッドレーザー治療など5種類の日帰り腰痛治療を私、野中康行と石田貴樹医師が中心となり行っておりました。

私と石田貴樹医師は診療を継続しておりますが、この度2021年7月に廃院となったILC国際腰痛クリニックが、2022年9月に新たに東京で開設されるとの事を聞き及びました。しかしながら、某クリニックは野中康行及び石田貴樹医師とは全く関わり合いのないクリニックであり、さらにそこで行われるているセルゲル法(DiscoGel®・ディスコゲル・ディスコジェル)は、5種類の日帰り治療の1つであるPIDD法(PIDT法)と同じ治療方法であるものの、対象としている疾患が全く異なります。現在、患者様より多数のご質問や不安が生じている事から、以下の通りご報告をさせて頂きます。

※現在、野中康行が運営しているNLC野中腰痛クリニックでは、PIDT法(PIDD法)の提供を終了しています。

セルゲル法に使われているDiscoGel®とは?

主成分

DiscoGel®の主成分はエチルアルコールと造影剤として使用されるタングステン(金属粉末)、セルロースです。

治療法

DiscoGel®は、椎間板ヘルニア内の髄核に薬液を注入し、局所壊死を引き起こすことで膨隆した椎間板の脱水と機械的牽引をもたらします。

椎間板内部を破壊し、減圧を促す原理はPLDDのレーザーによる焼灼と同じです。他の治療法との違いは、DiscoGel®の成分であるセルロースの沈着により補綴効果が生じることです。

治療条件

椎間板ヘルニアによる疼痛(腰痛、坐骨神経痛など)があり、4~6週間の保存的治療をしても改善がなく、椎間板の容量が2/3以上残っている場合に限る。

禁忌

絶対的禁忌

  • 遊離した椎間板片
  • 分節不安定性(すべり症
  • 神経孔または脊柱管の狭窄(脊柱管狭窄症
  • 無症候性の椎間板膨隆
  • 未治療の感染症および椎間板炎
  • 妊婦

相対的禁忌

  • 出血性素因(手術前に矯正する必要がある)
  • 抗凝固療法(手術前に中断する必要がある)
  • 椎間板の高さが2/3以上減少した重度の椎間板変性疾患
  • 同じレベルで椎間板手術の履歴がある

参考動画

フランスでDiscoGel®を取り入れた低侵襲の腰痛治療に従事している第一人者のコールマン医師の解説動画です。動画内(1:17~)でコールマン医師は「左の患者は明らかに椎間板ヘルニアがあり、広範囲脊柱管狭窄症も合併している場合、DiscoGel®は効果がないので外科的手術が適応となります。右の患者も同様で、椎間板ヘルニアと強い不安定性(すべり症)が見られるため手術が必要であり、DiscoGel®の適応ではありません。」と述べています。

出典論文

Asra Asgharzadeh, Naeimeh Khoshnood. Evaluating the Safety and Efficacy of Discogel in the Treatment of Herniated Lumbar Disc: A Systematic Review. Health Technology Assessment in Action, Vol 1, No 1 (2017)
URL:https://www.researchgate.net/publication/331681040_Evaluating_the_Safety_and_Efficacy_of_Discogel_in_the_Treatment_of_Herniated_Lumbar_Disc_A_Systematic_Review

Salvatore Masala, et al. Overview on Percutaneous Therapies of Disc Diseases. Medicina (Kaunas). 2019 Aug; 55(8)
URL:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6722686/

治療法の比較

治療法 PIDD法
(DiscoGel®未承認医療機器)
セルゲル法
(DiscoGel®未承認医療機器)
適応患者 椎間板が潰れていない若年層
(海外で推奨されている患者を対象)
椎間板が潰れている高齢者
(海外では一般的に禁忌とされている患者を対象
適応疾患 椎間板ヘルニアのみ
(医療機器メーカーおよびヨーロッパの医療機関で適応とされる基準に同じ)
椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、腰椎すべり症、圧迫骨折
(医療機器メーカーおよびヨーロッパの医療機関で禁忌とされる疾患である)
作用機序 DiscoGel®を使った治療は再生治療ではなく化学的髄核融解術であるので椎間板ヘルニアに対応できるが変性した椎間板を修復・再生することなどは期待できない。DiscoGel®の主な成分エタノールには水分を吸収してタンパク質構造を破壊・変性させる作用があり、注入後に髄核の保水能力が部分的に失われことになる。椎間板の脱水と共に内圧が下がり、ヘルニアが縮小することで神経の圧迫が改善し、痛みやしびれが軽減されると考えられている。

作成日:2022年7月23日
更新日:2024年7月6日

まとめ

上記のようにセルゲル法は適応疾患を大幅に拡大しておりますが、海外では椎間板ヘルニア以外の治療報告や論文も無く、どのような合併症や問題が生じるかが不明です。
以上より、私、野中康行と石田貴樹医師が行っていた5種類の日帰り治療の1つであるPIDD法とセルゲル法は、同じ未承認医療器材を使用し、同じ治療方法で行われますが、今後生じうる合併症等や問題は全く別物であり、効果も不明なものとなります。

従いまして、すでに私、野中康行と石田貴樹医師によりPIDD法を受けられた患者様とこれから治療をご検討の患者様に重要なご連絡を申し上げます。

補足

1
2018年より2024年6月までに野中康行と石田医師によりPIDD法を受けられた患者様は、海外の適応基準に準じて行っており、適応外使用は行ってはおりませんので、その点はご安心頂きご不安にならない様にお願い申し上げます。また野中康行および石田貴樹は今後も適応外使用は行う予定はございませんので、その点もご理解頂きたく存じます。
2
セルゲル法を受けられる患者様に関しましては、DiscoGel®の取り扱い説明書において、適応外とされている疾患を対象としているために、そもそも合併症や問題点に関して治療報告や論文報告が存在しえませんので、治療担当医師より十分な説明を受けられますようにお願い申し上げます。また既にセルゲル法を受けられた患者様に関しましては、生じうる合併症や問題に関しては未知数でありますので、野中康行および石田貴樹の診療能力ではどのような努力をもってしても対応が困難となり、当方では適切な診察が困難になりえる事が予見されますことをご理解頂きたく存じます。